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子どもの咳や鼻水が長引くのはなぜ?
こんばんは、院長の松村です。10-11月はインフルエンザの流行拡大に加え、乳幼児ではRSウイルス、幼児・学童ではマイコプラズマ、さらには溶連菌の流行も続いています。流行している感染症の種類が多く、具合の悪くなるお子さんが増えている印象です。感染症が増えているからこそ、本日は主症状となる咳、鼻をテーマに少し書いてみましたので参考にしていただければと思います。
はじめに:咳や鼻水が続くと不安になりますよね
「鼻が止まらない」「夜になると咳が出る」「もう何週間も治らない」——外来でも本当によく聞くお悩みです。
まずお伝えしたいのは、多くのお子さんでは“風邪の名残”や“次の風邪をもらっている”途中経過だということです。
今回は、咳や鼻水が長引く理由をガイドラインを参考に、私見も交えながらできるだけわかりやすく整理しました。
鼻、のど、気管・気管支は一本の道でつながっています
鼻・のど・気管・気管支はひとつの気道です。鼻水がのどに落ちる(後鼻漏)と、夜や朝方の咳の原因になります。
つまり「鼻が治らない=咳が続く」という関係があるため、鼻のケアは咳の治療にも直結します。
咳が3週間未満は「急性咳嗽」と定義されています
日本小児呼吸器学会『小児の慢性咳嗽ガイドライン』では、咳の期間が明確に定義されています。
- 3週間未満:急性咳嗽(=大部分は一般的な風邪)
- 3〜8週間:遷延性咳嗽
つまり、風邪の咳が2〜3週間続くのはガイドライン上も“ありうる範囲”ということです。
風邪が治ったのに咳だけ続く理由:気道が敏感な状態になるため
ウイルス感染のあと、気道の粘膜はしばらく敏感になります(気道過敏性)。そのため、
- 気温の変化
- 乾燥
- 運動
- 後鼻漏(鼻水が落ちる刺激)
といったわずかな刺激でも咳が出やすくなります。これは風邪が治りきっていないのではなく、治る途中に起こる“正常な経過”です。ウイルス感染後咳嗽といって良いでしょう。経験上、RSウイルス感染後などは特にこういった傾向があるように思います。
子どもの鼻水が長引きやすい理由
子どもの鼻の粘膜は大人より敏感で、炎症が治っても反応しやすい状態が続きます。一方で慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を心配される親御さんも多いのですが、小児は副鼻腔が未発達であり、一番大きい副鼻腔である上顎洞が成人並に発育してくるのは12歳前後と考えられるため、乳幼児では慢性副鼻腔炎は一般的ではないと考えます (乳幼児に上顎洞がないわけではありません)。
かぜの鼻水は「透明 → どろ 」と変化するのが典型的
かぜの鼻水は以下の流れで自然に変化します。
- 初期:透明・サラサラ
- 中〜後半期:黄色〜緑でどろっと(白血球など炎症細胞の成分)
黄色=細菌ではありません。回復の途中に最も多い色です。鼻水の色だけで細菌感染かどうかを判断することは推奨されていません。
初期は3〜7日の経過と考えています。すべての経過で2〜3週前後といった印象です。
よくある2つの経過パターン
① 風邪の名残タイプ
熱はないのに鼻水や咳だけ残る——とても多い経過です。1〜3週間かけて自然に改善することがほとんどです。
② 保育園ループタイプ(感染ループ)
集団生活では2〜3週間おきに新しい風邪をもらうことがあります。風邪が完全に治る前に次のウイルスに接触し、 ずっと咳・鼻が治らないということに、、、。しかし実態は「治らないまま次をもらっている」というのが正しいと考えます。
夜と朝の咳がひどい理由:鼻水→後鼻漏
鼻水が喉へ落ちる後鼻漏は、夜や朝方の咳の主因です。”痰がらみの咳”と表現されます。特に寝入りばな、朝の起きがけに目立ちます。
- 鼻水が喉に落ちる
- 刺激で咳が出る
重力の関係で仰向けで寝ている夜間、保育園でのお昼寝の時に痰絡みの咳が目立ちます。このタイプは(私見ではありますが)、一度静かに眠れると比較的朝まで睡眠が持続しているように思います。
なぜ薬を飲んでいるのに治らないように見えるのか?
これは薬の性質が関係します。風邪の咳・鼻を「すぐに止める薬」は現在存在しません。
● 鎮咳薬(アスベリン・メジコン等)をほとんど使わない理由
- 咳は痰やウイルスを出す必要な防御反応
- 無理に止めると痰が残り治りが遅くなる
- 小児のウイルス性咳嗽に明確な有効性のエビデンスが乏しい
- ガイドラインでもroutine使用は推奨されない
このような理由で使用することを控えますが、ある程度の年長児で咳がどうしてもひどいという場合には、ご家族とご相談のうえ処方することもあります。
● 第一世代抗ヒスタミン薬(ポララミン等)を使わない理由
私が小児科医になった頃はペリアクチンやポララミンなどの抗ヒスタミン薬は当たり前のように風邪のお子さんに処方していました。抗ヒスタミン薬の抗コリン作用が鼻汁の分泌を減らしたり、食欲増進作用、副作用の眠気でよく眠れるように・・・そんな理由だったかと思います。ですが、以下の理由でほとんど使用されていません。
- 眠気・機嫌悪化など副作用が強い
- 粘膜を乾燥させ痰を固め、咳を悪化させる
- 風邪の鼻水の根本治療にはならない
- けいれんを起こしやすくなる(熱性けいれんの既往があるお子さんにはけいれんリスクが高い)
● 第二世代抗ヒスタミン薬の限界
アレグラ(フェキソフェナジン)・ザイザル(レボセチリジン )等はアレルギーには有効ですが、
風邪(ウイルス性鼻炎)には効果が限定的です。鼻汁が出るメカニズムが、風邪とアレルギーでは異なるためです。
- 風邪の鼻水はヒスタミン以外の炎症物質で出る
- 透明鼻水が治らないからといって内服しても効くとは限らない(ですが、背景にアレルギー疾患の関与が否定できない場合などには使用を試みることがあります)。
● 風邪になにかお薬を処方するとしたら?
→ カルボシステインを処方します。
カルボシステイン(ムコダイン)は、痰や鼻水の性状を整え、出しやすくしてくれる薬です。
一部の研究では、小児の風邪で咳や痰の症状を少し和らげる可能性が報告されていますが、「飲めば劇的に治る魔法の薬」というわけではありません。しかしながら風邪の自然な回復を邪魔しにくい薬と考えられるため、カルボシステインの処方はあってよいと考えます。ただし、内服することによりかえって鼻水が増えたと感じることもあるようです。
小児科で確認している主な鑑別疾患
- アレルギー性鼻炎:透明鼻水・くしゃみ・鼻づまりが長く続く場合
- 副鼻腔炎:黄色〜緑の鼻水が3週間以上続く場合 (学童以上の場合考慮)
- 後鼻漏咳嗽:鼻水が喉に落ちて夜だけ咳 (鼻をかめない乳幼児では原因としてかなり多い印象)
- 気管支喘息・咳嗽型喘息:夜間・朝方の咳、ゼーゼー
- 百日咳・マイコプラズマ:発作的・長期の咳
お家でできるケア
- 鼻吸引や温タオルで鼻の通りをよくする
- 枕を少し高くして後鼻漏を減らす
- 室内湿度を40〜60%に保つ
- こまめな水分補給
受診を検討してほしいサイン
- 鼻水・咳が4週間以上続く
- 黄色・緑の鼻水が3週間以上続く
- 夜間の咳が強く眠れない
- ゼーゼー・呼吸が早い・胸が苦しそう
- 熱がぶり返す、元気がない、食べられない
保護者の皆さんへ
咳や鼻水が長引くと「悪い病気では?」と不安になりますよね。
しかし多くは自然に治る正常な風邪の経過です。
当院では問診、診察を通じて必要な鑑別を行い、危険なサインがないか確認したうえで「大丈夫です」とお伝えしています。症状について気になるときはいつでもご相談ください。
参考文献
- 日本小児呼吸器学会『小児の咳嗽診療ガイドライン2021・2025』
- 日本呼吸器学会『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025』
- Chang AB, et al. Pediatrics. 2013.
- Fujimura M et al. Respirology. 2021;26:974–986.
※本記事は一般向けにやさしく解説する目的で作成しています。症状が強い場合やご不安がある場合は、ご相談ください。







