
子どもの嘔吐・下痢|ウイルス性胃腸炎(お腹のかぜ)の自宅療養ポイントと受診の目安
保存版 「お腹のかぜって何?」「ウイルス性腸炎とノロウイルス腸炎は違うの?」
外来でとてもよくいただく質問です。この記事では、言葉の違いから自宅での過ごし方、受診の目安まで、まとめて分かりやすく整理します。
年末年始など「受診するべきか迷う」場面では、こちらも役立ちます:
▶︎ 年末年始の受診判断チャート(保存版)
まずは用語の整理:「お腹のかぜ」「ウイルス性」「ノロ」「細菌性」の違い
- お腹のかぜ:嘔吐や下痢を起こす胃腸炎全体の呼び方ですが、一般的にウイルス性を指すことが多いです
- ウイルス性胃腸炎(腸炎):ウイルスが原因の胃腸炎の総称(ノロ・ロタ・アデノウイルスなど)
- ノロウイルス腸炎:ウイルス性胃腸炎の中の原因ウイルスの一つ
- 細菌性腸炎:細菌が原因で、高熱・血便・強い腹痛を伴います(サルモネラ・カンピロバクターなど)
※ご家庭では原因を当てにいくより、まず水分が取れているか/元気があるかで判断するのが安全です。
ノロ・ロタ・アデノ…ウイルスによる胃腸炎の特徴(ざっくり)
※あくまで「よくある傾向」です。同じウイルスでも症状の強さは個人差があります。
| 原因ウイルス | よくある特徴 | 家庭で意識したいポイント |
|---|---|---|
| ノロウイルス | 嘔吐が目立ちやすい(短時間のうちに何度も嘔吐する)/冬に多い/家族内で拡がりやすい | 吐いた直後は休憩→少量頻回の水分。吐物処理と手洗いを丁寧に。 |
| ロタウイルス | 下痢が強くなりやすい/白っぽい便/乳幼児で脱水に注意/定期予防接種の対象疾患 | 「おしっこが出ているか」を特に確認。水分が取れない時は早めに相談。 |
| アデノウイルス | 発熱を伴うことがある/症状が長引くことも | 発熱が続く場合や元気が落ちる場合は相談。水分・全身状態を優先して判断。 |
「ノロですか?」と聞かれることが多いですが、原因がどのウイルスでも治療の基本方針は変わりません。
まず知っておいてほしい大切なポイント
嘔吐・下痢の回数そのものよりも、
「水分が取れているか」「元気があるか」「おしっこが出ているか」が最重要です。
この記事は「受診を促すため」ではなく、不安を整理して判断しやすくするためのページです。
吐いてしまった当日の対応フローチャート
- 吐いた直後:無理に飲ませず、1〜2時間休憩
- 落ち着いたら:5〜10mlを5〜10分おきに少量ずつ水分補給
- 再度吐いたら:また休憩して同じ手順(「少量・こまめ」が基本)、制吐剤の使用も検討
- 水分がほぼ取れない/ぐったり:受診を検討(下の「受診目安」へ)
自宅療養のポイント
① 水分のあげ方(いちばん重要)
- 吐いた直後は慌てずに、1〜2時間ほど休憩
- その後、5〜10mlを5〜10分おきに少量ずつ
- 一気に飲ませない(ここが一番大切です)
可能なら経口補水液(OS-1など)が理想です。塩味があるため嫌がる場合は、薄めたリンゴジュースやスポーツドリンク等でも構いません。ただし水、お茶など糖・電解質 (ナトリウム) を含まない飲料だけを与えつづけるのは避けましょう。低血糖や電解質異常 (低ナトリウム血症・・・重度ではけいれんや意識障害)のリスクがあります。
※乳児・基礎疾患のあるお子さんは調整が必要なことがあります。心配ならご相談ください。
② 食事はどうする?
- 無理に食べさせる必要はありません
- 欲しがらなければ水分だけでOK
- 食べられそうなら、消化の良いものを少量から
③ 休ませ方・過ごし方
- 無理に寝かせる必要はありません
- 元気があれば家の中で普段通りでもOK
- 体調に合わせて休憩をはさみましょう
脱水サインのミニチェック(ご家庭での目安)
次の項目がいくつか当てはまる場合は、脱水が進んでいる可能性があります。
- 半日以上おしっこが出ていない(または明らかに量が少ない)
- 口の中が乾いている/唇がカサカサする
- 涙が出にくい
- ぐったりして元気がない/寝てばかりで起きない
- 水分を飲めない・飲んでもすぐ吐く
- 顔色が悪い/手足が冷たい
※厳密には、おしっこが出ていない=ひどい脱水ではありません。嘔吐時は抗利尿ホルモンという尿を濃縮して尿量を減らし、水分を体内に保持しようとするホルモンが多量に分泌されることが知られています。
「受診するほどかな…」と迷う場合でも大丈夫です。水分の取り方や今の状態を一緒に確認しましょう。
受診を考える目安
- 水分がほとんど取れない
- 半日以上おしっこが出ていない(脱水の可能性)
- ぐったりして元気がない(脱水や低血糖の症状)
- 血便が出る(細菌性腸炎の疑いがある)
- 強い腹痛が続く(痛がって丸まる、歩けない等)
- 生後6か月未満(脱水、低血糖を来しやすい)
- 様子をみたが1日以上嘔吐が続く(家庭での対応の継続で良いか再評価が必要)
登園・登校の目安
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 嘔吐 | 嘔吐が落ち着き、飲食が可能(目安:24時間以上嘔吐なし) | 一気に食べて再嘔吐することもあるため、少量からが安心です |
| 下痢 | 下痢だけが残っていても、元気・水分摂取ができれば可 | 園の方針がある場合はそれに合わせましょう |
| 全身状態 | 普段に近い元気さがある | 「飲める」「遊べる」「おしっこが出る」が大きな目安です |
家庭内感染を減らすポイント
- 手洗い:石けんと流水が基本(吐物・便の処理後は特に丁寧に)
- タオルの共用を避ける:できれば別タオル
- 吐物・便の処理:処理後は換気・手洗い(可能なら使い捨て手袋を)
- 飲み物・食器も可能な範囲で分けましょう
吐物の処理(かんたん手順)
- 可能なら手袋・マスクを着用し、換気する
- 吐物の上にペーパー等をかぶせ、外側から内側へ集める
- ビニール袋に入れて口をしっかり縛って廃棄(手袋も一緒に)
- 周辺を拭き取り、最後に手洗い(石けん+流水)
消毒は必要?アルコール?次亜塩素酸?(ポイントだけ)
嘔吐・下痢の胃腸炎では、塩素系(次亜塩素酸)での清掃・消毒が役立つことがあります。
一方で、家庭で濃度を自己流で作ると事故の原因にもなります。
- 基本:まずは「拭き取って捨てる」+「石けんと流水の手洗い」
- 必要に応じて:床・トイレ・周囲の拭き取りに塩素系漂白剤(次亜塩素酸)を製品表示どおりに使用
- 混ぜない:酸性洗剤(トイレ洗剤など)と混ぜると有毒ガスの危険があります
- 換気:使用時は換気し、子どもの手が届かない場所で保管
「家でどこまで消毒すればいい?」は家庭環境で変わります。必要なら個別にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
ウイルス性腸炎とノロウイルス腸炎の違いは何ですか?
ウイルス性胃腸炎(腸炎)は「ウイルスが原因の胃腸炎の総称」、ノロウイルス腸炎は「原因がノロウイルスのもの」です。
ノロウイルスかどうか、検査しなくていいのですか?
多くの場合、治療方針は変わらないため検査は不要です。水分が取れていて元気であれば、自宅療養が基本になります。
何日くらいで治りますか?
嘔吐は半日〜2日、下痢は3〜5日ほどで落ち着くことが多いです。乳幼児の下痢は1-2週間と長引くこともありますが、元気があれば心配いらないことが多いです。ノロウイルスでは嘔吐がメインで下痢がほとんどないこともあります。また、食事再開後にしばらくしてから嘔吐がぶり返すこともあります。
整腸剤や吐き止めは必要ですか?
多くの場合、薬よりも水分補給が最優先です。状況により薬が役立つ場面もあるため、つらそうな場合はご相談ください。
受診したほうがいいか迷うとき、何を見ればいいですか?
迷ったら、まずは「水分が取れているか」「元気があるか」「おしっこが出ているか」を確認してください。それでも迷う場合は、遠慮なく受診・ご相談ください。
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